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H27 園児たちの飼育記録
園児たちの飼育記録:おおぞら保育園
平成27年度に群馬県桐生市のおおぞら保育園の年長組が市民養蚕に参加し、子どもたちが蚕を育てていく様子をまとめて送ってくださいました。一部を抜粋し紹介します。
富岡シルクについて_園児たちの飼育記録_1_1
導入として
富岡シルクブランド協議会より、蚕をいただけるということで、帰りの会で子ども達に伝えることにした。本に載っている蚕の写真を見せながら、
富岡シルクについて_園児たちの飼育記録_2_1
保育者:
「今度、保育園にこれをいただけるのだって。この虫さん知ってる?」
R:
「知ってる!つき組の時に見た。こういう丸いのにね、葉っぱと一緒に乗ってた。」
保育者:
「Rくん、よく覚えてるね。前のそら組さんもお世話していたんだって。今度はみんながお世話してくれる?」
K:「いいよ!」
保育者:
「でもさ、みんなは何食べるのかとか、どんな風に世話をすればいいのかとか、蚕のことまだ分からないことがいっぱいあるよね?お部屋探したらね、こんなに蚕の本がでてきたの。みんなで本見たりして蚕のことを調べてみたいと思います。これ置いておくから後で見てみてね。」
次の日の朝、シール貼りを終えると早速、蚕の本を見る姿が多く見られた。
保育者:
「何か分かったことある?」
Y:
「くわのはをたべるんだって。」
保育者:
「そうなんだ!よくわかったね。」 Y:「ここに書いてあるよ。」
保育者:
「ほんとだね。じゃあさ、このこと知らない友達もいるからみんなに分かるように書いて貼っておこう。」
紙と模造紙を用意しておき、調べたことを書いて貼れるように設定しておいた。
Rくん、Kくんも桑の葉を食べることやうんちの形などわかったことを真剣に紙に書いていた。
その日の帰りの会でそのことを取り上げて紹介した。
数日後、クラスに置いてある蚕の本をグループごとに渡して、調べることにした。
友達と一緒に本を見ていく中で、産んだときは卵が黄色いことや、成長すると幼虫は蛾になるということに気付いた様子があった。
Rくん、Kくんも桑の葉を食べることやうんちの形などわかったことを真剣に紙に書いていた。
その日の帰りの会でそのことを取り上げて紹介した。
数日後、クラスに置いてある蚕の本をグループごとに渡して、調べることにした。
友達と一緒に本を見ていく中で、産んだときは卵が黄色いことや、成長すると幼虫は蛾になるということに気付いた様子があった。
富岡シルクについて_園児たちの飼育記録_2_2
5月21日
保育者:「明日、蚕が来るのだけど、何が必要かな?」
K:「桑の葉!」
保育者:「なんで桑の葉がいるの?」
L:「だってさ、蚕が食べるから。」
保育者:「そうだね、蚕のエサがないとお腹空いちゃうものね。桑ってどこにある?」
R:「図書館の前!」
みんなで桑の葉を取ってきた。
K:「桑の葉!」
保育者:「なんで桑の葉がいるの?」
L:「だってさ、蚕が食べるから。」
保育者:「そうだね、蚕のエサがないとお腹空いちゃうものね。桑ってどこにある?」
R:「図書館の前!」
みんなで桑の葉を取ってきた。
5月22日
蚕をもらってきて、子ども達に蚕について話をした。蚕の実物を見たことで大きさも分かりやすい様子があり、今は3齢幼虫でどんどん大きくなっていくということも蚕の一生の表を見ながら説明すると真剣に聞く姿があった。
蚕の飼育を楽しみにしていた子ども達。事前に図鑑などで調べて蚕は何を食べて育つのかを知り、前日から、家から桑の葉を持って来ている子どももいた。飼育セットに人工飼料もあったことから、人工飼料と桑の葉で育つ蚕の比較をして、大きさかや色・うんちの大きさ等の違いが出てくるのか?飼育をしていくうえで、子ども達に気付いて欲しいという保育者の思いから、室内のなかで、それぞれわけて飼育していくことにした。
また、園長先生に戸外にも飼育小屋を作って頂き、温度の違いなど色々な環境により発育の変化があるのか?を子ども達と共に観察していくことにした。
蚕の飼育を楽しみにしていた子ども達。事前に図鑑などで調べて蚕は何を食べて育つのかを知り、前日から、家から桑の葉を持って来ている子どももいた。飼育セットに人工飼料もあったことから、人工飼料と桑の葉で育つ蚕の比較をして、大きさかや色・うんちの大きさ等の違いが出てくるのか?飼育をしていくうえで、子ども達に気付いて欲しいという保育者の思いから、室内のなかで、それぞれわけて飼育していくことにした。
また、園長先生に戸外にも飼育小屋を作って頂き、温度の違いなど色々な環境により発育の変化があるのか?を子ども達と共に観察していくことにした。
富岡シルクについて_園児たちの飼育記録_3_1
5月27日
エサやりや糞集めをなるべく子ども達と行えるように関わった。糞は手で集めていたが抵抗感を持つ様子は見られなかった。人口飼料のエサも最初は「くさい」と言っていた子もいたが、「みんながこのご飯あげないと、蚕お腹すいちゃうよね。」「ご飯あげたから喜んで食べているね。」など声掛けをすることで、「やりたい」「あげたい」と進んで行う様子が見られるようになった。観察している中で、脱皮した後の皮を見つけた。
富岡シルクについて_園児たちの飼育記録_4_1
K:「先生、なんかあった!」
保育者:「ほんとだ。これなんだろね?」
K:「なんだろ?」
保育者:「蚕って、どんどん大きくなっていくときに何していくのだっけ?来ていた服がちっちゃくなっておっきいのにするんだよね。」
K:「脱皮だ!」
保育者:「そうだね、脱皮するんだよね。Kちゃん、よく気付いたね。」
その後、Eも脱皮した皮を見つけた。
E:「先生、これなあに?」
保育者:「これね、Kちゃんも見つけたやつだ。Kちゃんが知っているから聞いてごらん?」
E:「これ何?」
K:「脱皮だよ。」
E:「脱皮したのか。」
保育者が間にはいることで友達同士で教えあう姿も見られた。
5月28日
集めた糞を模造紙に掲示してあり、何日か経つと初日より大分大きくなった様子があった。糞も大きくなっていっていると気付く様子もあった。また、Sは粘土で遊んでいる時に、粘土の蚕を作ったり、家庭からダンボールで制作した桑の葉と蚕を持参したりと興味を持っている様子がある。
富岡シルクについて_園児たちの飼育記録_5_1
6月2日
人口飼料で育てている蚕が、育って大きくなってきた。しかし、その中で3匹程小さい蚕がいた。
保育者:「なんでこっちの蚕は小さいのだろう?同じ部屋で同じエサなのにね。」
K:「ふとっちょのが邪魔で食べられないんだよ。」
保育者:「そっか、大きい蚕がいてエサが食べられないから大きくなれないのかもしれないね。じゃあ、どうしてあげればいいと思う?」
K:「あっちとこっちで分けてあげればいいよ。」
H:「でも、こっちに来てエサ食べられちゃうよ。」
K:「じゃあ、紙とかで、こっちにこないようにしてあげる?」
保育者:「そうだね、何かいいのあるかな?」
K:「これとこれをテープでくっつければいいんじゃない?」
H:「テープ持ってくるよ。」
友達同士で相談しながら進める姿が見られた。
保育者:「いいのができたね。じゃあ、これ置いて仕切りにしてあげようね。」
K:「でも、これじゃふとっちょのがこっち来ちゃうかも。」
保育者:「じゃあ、これで大丈夫か、明日来た時に見てみよう。大きいのが越えて来てたらまた違うのにしよう。」
帰りの会でクラス全体にも仕切りを作って設置したことを発表してもらった。
保育者:「なんでこっちの蚕は小さいのだろう?同じ部屋で同じエサなのにね。」
K:「ふとっちょのが邪魔で食べられないんだよ。」
保育者:「そっか、大きい蚕がいてエサが食べられないから大きくなれないのかもしれないね。じゃあ、どうしてあげればいいと思う?」
K:「あっちとこっちで分けてあげればいいよ。」
H:「でも、こっちに来てエサ食べられちゃうよ。」
K:「じゃあ、紙とかで、こっちにこないようにしてあげる?」
保育者:「そうだね、何かいいのあるかな?」
K:「これとこれをテープでくっつければいいんじゃない?」
H:「テープ持ってくるよ。」
友達同士で相談しながら進める姿が見られた。
保育者:「いいのができたね。じゃあ、これ置いて仕切りにしてあげようね。」
K:「でも、これじゃふとっちょのがこっち来ちゃうかも。」
保育者:「じゃあ、これで大丈夫か、明日来た時に見てみよう。大きいのが越えて来てたらまた違うのにしよう。」
帰りの会でクラス全体にも仕切りを作って設置したことを発表してもらった。
6月3日
保育者:「大きい蚕仕切り登っちゃってた?」
K:「大丈夫だった!」
その後も「大きくなった」「やっぱりエサが食べられなかったんだ」と観察しながら成長を喜ぶ姿が見られた。帰りの会前に、まぶしを設置した。まゆになる前は触らないよう話をした。
R:「じゃあ、さわらないでねって書いておく?」
保育者:「そうだね、いい考え。」
Rに紙に書いて張ってもらった。設置してすぐ1匹登り始めた。観察を楽しんでいた。
K:「大丈夫だった!」
その後も「大きくなった」「やっぱりエサが食べられなかったんだ」と観察しながら成長を喜ぶ姿が見られた。帰りの会前に、まぶしを設置した。まゆになる前は触らないよう話をした。
R:「じゃあ、さわらないでねって書いておく?」
保育者:「そうだね、いい考え。」
Rに紙に書いて張ってもらった。設置してすぐ1匹登り始めた。観察を楽しんでいた。
6月4日
保育者:「外の蚕のおうちにはまぶしないよね?どうしよう。」
R:「1個持っていってあげる。」
保育者:「そうすると、こっちのまぶしが立っていられなくなるし、登ってるのもいるよ。」
R:「つくる?」
保育者:「いいね、作ってあげようか。廃材出すから考えて作ってみよう。蚕は自分と同じくらいの小さいお家が好きなんだって。」
それぞれが思い思いに制作した後、蚕小屋へ設置した。
R:「1個持っていってあげる。」
保育者:「そうすると、こっちのまぶしが立っていられなくなるし、登ってるのもいるよ。」
R:「つくる?」
保育者:「いいね、作ってあげようか。廃材出すから考えて作ってみよう。蚕は自分と同じくらいの小さいお家が好きなんだって。」
それぞれが思い思いに制作した後、蚕小屋へ設置した。
6月19日
まぶしにまゆができたので、子ども達と一緒に取り出した。人口飼料と桑と与えたエサが違うので比較をした。
保育者:「最初は色を見てみようか。こっちの箱とこっちの箱で違うところはある?」
R:「こっちが茶色い。」
蚕小屋で育てたもの(エサは人口飼料から桑)を指差す。
保育者:「なんで茶色いんだろう?」
K:「うんちがついてるからかな?」
Y:「おしっこがついてるのかも。」
保育者:「ほんとだ、けばを取ったら白くなったね。葉っぱの上でまゆになったから、うんちとかもつきやすかったのかもね。」
保育者:「なんで小さいのと大きいのがあるのかな?」
K:「ご飯が食べられなかったから。」
Y:「糸があんまりなかったから。」
K:「まゆになるときに体が丸くなったから。」
保育者:「いろんな理由が考えられるね。じゃあ、先生まゆ見てみたら人口飼料の方が大きいまゆが多くて、桑で育てた方は小さめだと思ったんだけど、なんでだと思う?」
K:「人口飼料の方が栄養がたくさんあって、食べると大きくなって、桑も栄養あるけど人口飼料の方がたくさんだから。」
保育者:「そうだね、人口飼料は栄養がたくさん入ってるんだよね。」
色や大きさを比較し、子ども達の気付きもたくさんひろえた。自分達で育てた蚕のまゆを集めるということで嬉しそうに取り組む姿があった。
保育者:「最初は色を見てみようか。こっちの箱とこっちの箱で違うところはある?」
R:「こっちが茶色い。」
蚕小屋で育てたもの(エサは人口飼料から桑)を指差す。
保育者:「なんで茶色いんだろう?」
K:「うんちがついてるからかな?」
Y:「おしっこがついてるのかも。」
保育者:「ほんとだ、けばを取ったら白くなったね。葉っぱの上でまゆになったから、うんちとかもつきやすかったのかもね。」
保育者:「なんで小さいのと大きいのがあるのかな?」
K:「ご飯が食べられなかったから。」
Y:「糸があんまりなかったから。」
K:「まゆになるときに体が丸くなったから。」
保育者:「いろんな理由が考えられるね。じゃあ、先生まゆ見てみたら人口飼料の方が大きいまゆが多くて、桑で育てた方は小さめだと思ったんだけど、なんでだと思う?」
K:「人口飼料の方が栄養がたくさんあって、食べると大きくなって、桑も栄養あるけど人口飼料の方がたくさんだから。」
保育者:「そうだね、人口飼料は栄養がたくさん入ってるんだよね。」
色や大きさを比較し、子ども達の気付きもたくさんひろえた。自分達で育てた蚕のまゆを集めるということで嬉しそうに取り組む姿があった。
考察
蚕の飼育を通して、日頃から何事にも興味のあるK君につられ、他の子ども達も図鑑などを用いて、積極的に蚕について調べる姿がみられた。特に、体を動かす事は得意だが、何かに集中して取り組むことが苦手だった児童たちが熱心に図鑑で調べ、蚕のうんちの清掃や餌やり等のお世話を進んで行う姿がみられた。
その中でも、S君は制作活動の中で、粘土で蚕や桑の葉作りと発展し、飼育することによって表現活動に発展していく姿には成長が感じられた。
また、H君は蚕の世話をすることによって、畑の作物に対しても気にかけるようになってきた。雨の降ったある日、「雨が降って、土の中のじゃがいもも大きく育つね」と、家庭にて発信する姿があったと、保護者の方から報告があり、色々な面で成長していることが伺えた。
今後の活動として、一部の繭を座繰り体験へと発展させるため、冷凍庫に入れ、蛹を殺して繭から糸を引く事を子ども達に伝えると、「可愛そう…」という声も聞かれたが、本当に繭から糸になるのかの疑問への興味関心が高まり、今から座繰り体験に期待を持っている様子が伺える。
蚕の飼育を通して、責任感や集中力が芽生えた子ども達。子ども自身が疑問に対して確信への糸口を見出したり、壁に当ったりしながら、かつて、日本の伝統産業であり、この地域でも農家の主産業であった養産業を直接体験する事ができた。
また、子どもたちから『桐生は日本の機どころ』『繭と生糸は日本一』の“上毛カルタ”に結びつき、カルタと実践を通して、自分のふるさとを大切にする心を育てていくと共に、今後も“科学の心”の面と養蚕業や絹織物業の日本の伝統産業の両者を併せて教材として更に研究を進めていきたい。
その中でも、S君は制作活動の中で、粘土で蚕や桑の葉作りと発展し、飼育することによって表現活動に発展していく姿には成長が感じられた。
また、H君は蚕の世話をすることによって、畑の作物に対しても気にかけるようになってきた。雨の降ったある日、「雨が降って、土の中のじゃがいもも大きく育つね」と、家庭にて発信する姿があったと、保護者の方から報告があり、色々な面で成長していることが伺えた。
今後の活動として、一部の繭を座繰り体験へと発展させるため、冷凍庫に入れ、蛹を殺して繭から糸を引く事を子ども達に伝えると、「可愛そう…」という声も聞かれたが、本当に繭から糸になるのかの疑問への興味関心が高まり、今から座繰り体験に期待を持っている様子が伺える。
蚕の飼育を通して、責任感や集中力が芽生えた子ども達。子ども自身が疑問に対して確信への糸口を見出したり、壁に当ったりしながら、かつて、日本の伝統産業であり、この地域でも農家の主産業であった養産業を直接体験する事ができた。
また、子どもたちから『桐生は日本の機どころ』『繭と生糸は日本一』の“上毛カルタ”に結びつき、カルタと実践を通して、自分のふるさとを大切にする心を育てていくと共に、今後も“科学の心”の面と養蚕業や絹織物業の日本の伝統産業の両者を併せて教材として更に研究を進めていきたい。
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